2009年8月20日木曜日

共同声明の意味について

共同声明の意味について

 最近オバマ大統領が就任後初めてロシアを訪れ、メドベージェフ大統領と会談を行った。彼らの主たる目的は今年12月に失効する第1次戦略兵器削減条約(START 1)に代わる新核軍縮条約について話し合うことで、その結果共同声明が発表された。
 日本人はこの共同声明に狂喜した。核軍縮がこれにより急速に進むかのようなイリュージョンを持った。ナイーブな日本の学者の中には世界唯一の被爆国として核軍縮や非核化に日本は主導的役割を果たすべきなどと言い出した。これはドンキホーテ式の空論である。なぜなら軍備弱小な国が世界軍縮史上主導的役割を果たしたことなどは一度もないからだ。
 大体共同コミュニケなどというものは余り意味がなく、しかも無害のものが多い。さらにそれにはイデオロギーが含まれている。ベーコンはかつてイデオロギーを欺瞞の意味に用いた。すぐにでも実現するかのように見せかけて世の善男善女を騙すのがイデオロギーであり、宗教の念仏と同じである。そもそもすべての宗教は欺瞞であり、ありもしないことを堂々とあるかのように述べる。でも反対に欺瞞は人間の安心立命のためには必要であるかもしれぬ。
 共同コミュニケは当事者の政治的利益を擁護するための思想的武器に過ぎぬ。こんなものに長時間をかけ、余り真剣に議論するのは時間とエネルギーの浪費である。国際政治学の基礎概念はやはりPowerとNational Interest であることを片時も忘れてはならない。

古枯の木――2009年8月19日記す。

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