2009年2月7日土曜日

大日本主義を排せ

大日本主義を排せ
  古枯の木

 筆者のライフワークの一つは太平洋戦争の原因論である。私見では戦争の原因の一つに軍部、マスコミ、国民の酔った大日本主義があったと思う。実力も無いのに驕っていたわけだ。これは現在に至るも引き継がれている。経済大国という言葉が端的にこれを表している。

 第一次大戦後、日本は5大国の一つになったと自惚れていたがその実力のほどはいかがであったか。当時、機関銃の数はイギリス20万挺、ドイツ50万挺に対し、日本はわずか1,300挺、自動車の数は英仏35万台に対し、日本はたったの300輌、しかも修理能力はゼロ。しかるに軍部は自らを世界の軍事大国なりと錯覚、過信していた。

 ドイツ海軍の副提督で戦前と戦中に東京に駐在したことのあるポール・べネカー(Paul H. Weneker)がいる。彼は日本の戦争遂行と敗戦に至る過程を第3者的に観察していたが、日本敗戦の最大理由を自信過剰としている。

 1992年バブルがはじける前、日本人の多くは日本が-経済大国であり、アメリカ全土を購入することも夢ではないと考えていた。だが冷静に観察すれば日本のように国土が狭小で資源の乏しい国は経済大国たるの第1要件を満たしていない。産業を近代化するための市場、原料を欠き、さらに学問、科学の遅れから技術を欧米に学ばなければならなかった。今も欧米が先生である。この意味から日本人は理由のない驕慢、思い上がり、跳ね上がり、自惚れを廃棄しなければならない。(この点に興味のある方は筆者のブログ・エッセイ“日本は経済大国か”をご参照願いたい)

 数年前、日本で“日本敗れたり”というタイトルの本を発行した。これは日本が経済力と軍事力で10倍も強力なアメリカになぜ戦いを挑み、どのように敗れていったかを書いたものである。この本を英訳し、ほぼ完全なバイリンガルであるわが家の次男にレビューさせた後、ニューヨークの出版社に送った。現在なお出版についてネゴを重ねている。英訳本のタイトルは“Fallen Sun” であるが副題を”From Overconfidence to Despair“とした。アメリカの友人に本のタイトルについて相談したところ、”Overconfidence“なる言葉ほど当時の日本の実情を反映しているものはないだろうとのことだった。

古枯の木―アメリカ在住35年、歴史愛好家、著書の一つである“日本破れたり”は阿川弘之さんに読んでもらい、氏から手紙をいただいた。


 

1 件のコメント:

  1. ”日本敗れたり”興味深く読みました。
    物事は必ず両面を見ろ!はあらゆることに言えると思いました。英訳した本が出版されたらよいですね。きっとアメリカ人が読んでも面白いと思います。再読したいと思います。

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