2009年9月3日木曜日

民主党の圧勝に思う

民主党の圧勝に思う

 自民党はここ10年ぐらい小泉純一郎の場合を除いて影武者たちが弱い総理を擁立して自由にこれを操作し、票田に金をばら撒いて議員席の確保のみに注力し、国の安全や国民の福祉をおろそかにしてきた。今回の衆議院選挙で民主党が308議席を獲得し大勝したが自民党にとりその敗北は因果応報である。
 そもそも政党とは政権獲得会社であり、もし配当がなければ株主は直ちに雲散霧消してしまう。しかもオバマ大統領のように素早くやらねばならぬ。さらに日本の政党は真の意味の政党ではなくてfactionに過ぎぬ。もたもたしていると烏合の衆である民主党そのものが瓦解してしまう。
 鳩山総理候補に望むことは民主党が天下の公党として日本民族の運命を背負っており、民族の利益を増大させるという気概を持ってほしいということである。影武者を寄せ付けず、いつも公明正大に大所高所から建設的なpolicy making, decision making をなすことが必要である。
 政治とは生存競争の表れであり、生存競争には絶対に力が必要である。308議席という力をフルに利用すべきである。わずかな議員しか持たぬ福島みずほの社民党、亀井静香の国民新党、志位和夫の共産党などは黙殺すればよい。つまらぬ相手に大騒ぎするから相手が図に乗って第一党や第二党のような振る舞いをする。連立政権の下らぬ夢は忘れるべきだ。
 四日市市に住む日本の友人が最近発表された鳩山論文を送ってくれた。これは全くの正論であり、自民党の細田幹事長がなぜ非難したのか理解できない。この論文に対してアメリカのジャーナリズムは鳩山はグローバリゼーションや市場原理主義に反対であるとかアジアに軸足を移さんとする日本の外交政策は危険であるとかコメントしている。またたとえアジア共同体ができても日米関係の維持強化を望むとも述べている。いつまでも、どこまでもアメリカに追従してくると思っていたアメリカ政府にとり鳩山論文は驚きというよりは意外の念を持って受けとられたのだろう。
 グローバリゼイションの目的は私見では市場の狭隘化に対する対症療法と石油を含む資源の独占を意味した。一国の総理大臣がこれを批判するのは当然の権利である。またアジアの一国としてアジアを重視することも理の当然である。過去に記者団から日本の進むべき方向について質問を受けると、“適切に判断する”という総理が多かった。総理たる者は得るところと失うところのいずれが大きいかをよく斟酌し、ときには“日本はその国益の命ずるところに従って行動する”と言ったらどうか。
 さらにアメリカのジャーナリズムはゲイツ国防長官を含むアメリカの要人数人が近く鳩山に会うため日本を訪問すると伝えている。こんなことはいままでに決してなかったことであり、アメリカの力の衰退を感じる。
 外交史上有名な格言がある。それは“アレクサンダー、それは夢であり、ナポレオン、それは行動である”である。アレクサンダーとは1821年、アラスカとカリフォルニアの領有宣言を発した夢多きロシアのアレクサンダー1世を意味する。鳩山総理候補にとり政権公約は一種の夢であったろうが今後はチェンジに向け果敢な行動を起こしてもらいたい。
 敗戦後、日本の平和が保たれたのは、アメリカに負んぶしてきたからだ。平和憲法のためではない。もしアメリカの核の傘を脱したら、たちまち真空地帯が生じ、中国、北朝鮮、韓国に日本の領土の全部または一部が狙われてしまう。安保条約があってもアメリカが日本を守るという確約はない。同盟関係を維持しつつ、この点についてにのアメリカのコミットメントを得ることが肝要だ。もちろん国力の差からアメリカとの対等な関係はドダイ無理で、ある程度従わざるをえないと考える。
 安保条約は日本に領土公権があることを承認するもアメリカは租借地を自由にいくらでも得ることができる。地位協定は全く不平等条約の典型だ。NATOでは英仏は共同使用権としてアメリカに基地を提供している。日本は早急にNATO並みにその改定を求めるべきだ。
 最後に鳩山総理候補は祖父鳩山一郎の友愛精神を説くが、1929-34年のロンドン軍縮会議の頃、海軍の対米強硬派の加藤寛治、末次信正の尻馬に乗って犬飼毅とともに日本を軍国主義の方向に追いやった張本人の一人であることを付け加えておく。
古枯の木――2009年9月2日記す。

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