2009年9月2日水曜日

人種の坩堝

人種の坩堝(るつぼ)

 アメリカは一般的には多種多様な民族の混在する人種の坩堝であるといわれている。でも本当に人種の坩堝であろううか。坩堝というからにはすべてのものが混合、融和していなければならないが、本当に融和しているだろうか。アメリカ人ジャーナリストで歴史学者でもあるMichael Lindはその著書“The Next American Nation” の中でアメリカは過去に3度革命を経験し、今さらに4度目の革命に入りつつあると強調する。第1のものは独立時のアングロアメリカン革命、第2番目のものはドイツ、イギリスから多数の移民がやって来、アメリカが第一次大戦に参戦するユーロアメリカ革命、3番目のものは多種の文化が混在するマルタイ・カルチャー革命、そして最後のものがいま経験しつつある全アメリカ的坩堝革命(Trans-American Melting Pot)だという。

 Lindは5族(アングロサクソン、黒人、ラティーノ、インディアンそしてアジア人)が共存共栄し、人種の坩堝の中で新しい社会的そして政治的秩序を形成しつつあるという。そして彼はこの現象を人種偏見のないリベラルなナショナリストの革命だと説明する。だが本当にこの社会は5族が協和し人種の坩堝をなしているだろうか。
 
 古枯の木は人智はそこまでは発達していないと思う。各種族は自分たちの伝統、文化、言語、宗教を墨守し、容易に他種族と交わろうとしない。このような現実に逢着して、あるアメリカの識者はアメリカは人種の坩堝からは遥かに遠く、ブイヤベース(bouillabaisse)の社会を形成しているに過ぎないと喝破した。ブイヤベースはフランス料理の一種で白身の魚、いか、貝などの海の食材と玉ねぎ、セロリ、トマトなど陸の食材に香辛料としてサフランを加えたごちゃ煮のスープ。ごちゃ煮ではあっても各食材は崩れず原型を留めている。現在のアメリカはmelting potではなくて、せいぜいブイヤベース程度かもしれない。

古枯の木――2009

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