2009年1月30日金曜日

アメリカドッキリ物語2

アメリカ・ドッキリ物語 2
                  
                 古枯の木

 現在アメリカでは日本食が大変なブームである。ブームとかラッシュというものは必ず終わるが、さて日本食ブームはいつまで続くのか。カリフォルニア州だけで日本食レストランは現在2,600軒、全米規模で6,000軒ぐらいあるといわれている。わが家の近くにもたくさんあり、新しいものもどんどんできている。今回はこの“日本食とアメリカ人”についての話題を2つ提供したい。

1. 懐石料理には事前の説明が必要
 
昔、名古屋で勤務しているとき、アメリカのディーラー社長夫妻がやって来た。ある晩、彼らを懐石料理に招待した。懐石料理は初めて食べるとのことで夫妻は非常にエンジヨイしていた。懐旧談に時間の経つのも忘れた。食事が終わりに近づいたとき、突然社長が、“Koji, what is the main dish tonight?”と訊いてきた。最初は何のことか分からずドッキリしたがすぐに彼の質問の意味が判明した。社長は懐石料理をアペタイザーと勘違いし、この後にメインコースがあると期待していたのだ。
 
 懐石料理には変化はあるが、量に乏しい。しかもアメリカ人は大食漢が多い。せっかく一流の懐石料理店に案内したのに彼らに満足してもらえなかったことに大きなショックを受けた。このインシデント以来、外国人を懐石料理に招待するときは事前にその意味を説明することにしている。

2. シャブシャブは避けよ

 やはりある晩、別のアメリカ人夫妻を今度はシャブシャブの店に案内した。席に着くや否や夫人が肉を見て、“オー、ノー”と叫び、シャブシャブの肉に一切箸をつけようとはしなかった。彼女の説明によると脂身の多い肉を食べることは不可能で、アメリカでこのような肉の販売は許可されないだろうとのことだった。脂身がおいしいと言う女将の言葉にもついに彼女は首を縦に振らなかった。せっかくシャブシャブの一流店に案内したのそこに現れた肉のためにシャブシャブを断られたときのショックは大きかった。

 アメリカの大きな社会問題の一つが肥満の問題である。肥満は英語でobesityと言い、テレビの中でこの言葉に出ぬ日はない。男性の63%、女性の55%がobesityに苦しんでいるといわれている。肥満が高血圧、高コレストロール、糖尿病、心臓病の原因であるらしい。

 肥満の最大の元凶が脂肪(fat)である。アメリカ人のfatに対するイメージは極めて悪い。Fat chanceというとチャンスがたくさんあるような感じを与えるが、これはまったく逆でチャンスのないことを意味する。Fat bookというと分厚くても余り内容のない本を意味する。
最近アメリカの商品の中には脂肪のないことを強調するため箱に“Zero grams of fat”とか“Fat Free”(この場合のfreeは“自由”ではなくて“ない“ことを意味する。最近China Freeの商品が人気を博している)と大書しているものが目立つ。学校によってはfat入りsoft drinksの販売を禁止しているところもある。

 日本人は肉の脂身が好きである。筆者も渡米直後ステーキの脂身を食べようとしたら、アメリカ人から食べぬようにとたしなめられた。霜降りの肉を英語でmarblingというが、アメリカのカウボーイたちはなぜ日本でこれが売れるのか不思議に思うらしい。

 一般に日本食はヘルシーと考えられているが余りに脂身の多い牛肉や豚肉のシャブシャブはヘルシーとは言えまい。以前“うに”がすし屋でアメリカ人に非常に人気があったが、最近ではコレステロールが多すぎるということでその人気はがた落ちだと聞いた。中にはうには“baby shit”(赤ん坊のくそ)だと言って敵愾心を示すアメリカ人もいる。

 いずれにせよこの1件以来、筆者は外国人をシャブシャブには連れて行かないことにしている。

 古枯の木―在米35年、歴史愛好家、著書に『日本敗れたり』『ゴールドラッシュ物語』『アメリカ意外史』など)
 
アメリカ・ドッキリ物語 2
                  
                 古枯の木

 現在アメリカでは日本食が大変なブームである。ブームとかラッシュというものは必ず終わるが、さて日本食ブームはいつまで続くのか。カリフォルニア州だけで日本食レストランは現在2,600軒、全米規模で6,000軒ぐらいあるといわれている。わが家の近くにもたくさんあり、新しいものもどんどんできている。今回はこの“日本食とアメリカ人”についての話題を2つ提供したい。

3. 懐石料理には事前の説明が必要
 
昔、名古屋で勤務しているとき、アメリカのディーラー社長夫妻がやって来た。ある晩、彼らを懐石料理に招待した。懐石料理は初めて食べるとのことで夫妻は非常にエンジヨイしていた。懐旧談に時間の経つのも忘れた。食事が終わりに近づいたとき、突然社長が、“Koji, what is the main dish tonight?”と訊いてきた。最初は何のことか分からずドッキリしたがすぐに彼の質問の意味が判明した。社長は懐石料理をアペタイザーと勘違いし、この後にメインコースがあると期待していたのだ。
 
 懐石料理には変化はあるが、量に乏しい。しかもアメリカ人は大食漢が多い。せっかく一流の懐石料理店に案内したのに彼らに満足してもらえなかったことに大きなショックを受けた。このインシデント以来、外国人を懐石料理に招待するときは事前にその意味を説明することにしている。

4. シャブシャブは避けよ

 やはりある晩、別のアメリカ人夫妻を今度はシャブシャブの店に案内した。席に着くや否や夫人が肉を見て、“オー、ノー”と叫び、シャブシャブの肉に一切箸をつけようとはしなかった。彼女の説明によると脂身の多い肉を食べることは不可能で、アメリカでこのような肉の販売は許可されないだろうとのことだった。脂身がおいしいと言う女将の言葉にもついに彼女は首を縦に振らなかった。せっかくシャブシャブの一流店に案内したのそこに現れた肉のためにシャブシャブを断られたときのショックは大きかった。

 アメリカの大きな社会問題の一つが肥満の問題である。肥満は英語でobesityと言い、テレビの中でこの言葉に出ぬ日はない。男性の63%、女性の55%がobesityに苦しんでいるといわれている。肥満が高血圧、高コレストロール、糖尿病、心臓病の原因であるらしい。

 肥満の最大の元凶が脂肪(fat)である。アメリカ人のfatに対するイメージは極めて悪い。Fat chanceというとチャンスがたくさんあるような感じを与えるが、これはまったく逆でチャンスのないことを意味する。Fat bookというと分厚くても余り内容のない本を意味する。
最近アメリカの商品の中には脂肪のないことを強調するため箱に“Zero grams of fat”とか“Fat Free”(この場合のfreeは“自由”ではなくて“ない“ことを意味する。最近China Freeの商品が人気を博している)と大書しているものが目立つ。学校によってはfat入りsoft drinksの販売を禁止しているところもある。

 日本人は肉の脂身が好きである。筆者も渡米直後ステーキの脂身を食べようとしたら、アメリカ人から食べぬようにとたしなめられた。霜降りの肉を英語でmarblingというが、アメリカのカウボーイたちはなぜ日本でこれが売れるのか不思議に思うらしい。

 一般に日本食はヘルシーと考えられているが余りに脂身の多い牛肉や豚肉のシャブシャブはヘルシーとは言えまい。以前“うに”がすし屋でアメリカ人に非常に人気があったが、最近ではコレステロールが多すぎるということでその人気はがた落ちだと聞いた。中にはうには“baby shit”(赤ん坊のくそ)だと言って敵愾心を示すアメリカ人もいる。

 いずれにせよこの1件以来、筆者は外国人をシャブシャブには連れて行かないことにしている。

 古枯の木―在米35年、歴史愛好家、著書に『日本敗れたり』『ゴールドラッシュ物語』『アメリカ意外史』など)
 

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