2010年9月4日土曜日

ノモンハン戦争

ノモンハン戦争

 今日は名著を紹介したい。ノモンハン戦争は1939年5月11日早朝、外蒙古の騎兵隊が越境攻撃し、満軍を駆逐して内部にまで手を伸ばしたことから始まった。外蒙古の後ろにはソ連がおり、日本陸軍は彼らの戦車と重砲により完敗させられた。ソ連はソ満国境を確定し、内蒙古、外蒙古の民族主義運動にとどめを刺し、日本の対ソ侵略の意図を事前に粉砕した。これがノモンハン戦争(またはノモンハン事件とも呼ばれる)の真相である。2,009年岩波書店から刊行された田中克彦著“ノモンハン戦争”はこの戦争を軍事、政治、経済、地理、文化、宗教の多面から客観的にアプローチしている名著である。ただ戦争に関する記述の少ないのが少し残念ではある。田中は一橋大学の名誉教授でロシア語、中国語、蒙古語、ドイツ語に堪能のようである。
 ノモンハン戦争でソ連は政治目的のほとんどすべてを達成し、ソ連の一方的勝利に終わったが、日本にとってそれは何であったか。それは将軍たちにとり火遊びであった。同感である。当時流行した言葉にこんなものがある。”将軍勲章、将校商売、下士官道楽でお国のためは兵ばかりなり“。そうだ。将軍たちにとり目的は国家や国民を守ることではなくて、勲章と出世だけだったのだ。しかも作戦主任の服部卓四郎、作戦参謀の辻政信、大本営の瀬島竜三など責任ある立場にあった人間がもっとも無責任だった。多くの日本兵を殺しながら彼らがノモンハン戦争の失敗を詫びたことなど一度もない。
 田中は日本人の精神構造はノモンハン事件のころから余り進歩していないと心配する。政、財、官の癒着もその一つだ。古賀誠らの自民党議員や官僚が土建業者と結託して無駄な公共工事を多数起こして日本の財政をメチャクチャにしてしまった。日本は現在、世界最高の国債依存率を持ち、危機的な財政状況にある。ギリシャ、イタリヤ、アイルランドなどより遥かに悪い。国民にこれを詫びた政治家、官僚など一人もいない。小沢一郎に代表される民主党の金権腐敗の政治屋たちがばらまき政策によって自民党の徹を踏もうとしている。やはり日本人は未だにノモンハンの時代に生きているのか。同感である。

古枯の木―2010年9月4日

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